シリコンゴム加工とは?特徴・用途・加工技術を徹底解説!

GOMUpedia vol.2

シリコンゴム加工のすべてを網羅的に知りたい方へ。この記事では、優れた耐熱性・耐候性を持つシリコンゴムの特性から、ウォータージェット、金型成形、切削、抜き加工といった主要な技術の選び方、医療・食品から電子部品まで幅広い用途、さらには最適な加工業者選定のポイントまで、専門家視点で徹底解説します。試作から大量生産まで、あなたのニーズに最適な加工方法と、その活用法が明確になります。

シリコンゴムとは?基本的な特徴

シリコンゴムとは、ケイ素原子(Si)と酸素原子(O)が交互に結合したシロキサン結合を主鎖に持つ合成ゴム(ポリマー)です。一般的なゴムが炭素を主鎖とする有機化合物であるのに対し、シリコンゴムは無機質の骨格を持つため、他のゴムにはないユニークで優れた特性を発揮します。

その化学構造から、高温や低温、紫外線、オゾンといった過酷な環境下でも安定した性能を維持できるのが最大の特徴です。医療、食品、自動車、電子機器など、幅広い分野でその特性が活かされています。

シリコンゴムの利点(耐熱性、耐候性、柔軟性、電気絶縁性 など)

シリコンゴムは、その独自の化学構造により、多くの優れた特性を持っています。以下に主な利点とその詳細、具体的な用途例をまとめました。

利点 詳細 主な用途例
耐熱性 非常に広い温度範囲(-55℃~200℃以上)で安定した性能を維持し、

熱による劣化が少ない。

加熱調理器具、電子部品のシール材、自動車エンジン周辺部品
耐候性 紫外線、オゾン、雨風、湿気などに強く、屋外での長期使用が可能

変色やひび割れが少ない。

屋外照明のガスケット、建築用シーリング材、太陽光発電関連部品
柔軟性・弾性 低温下でも硬化しにくく、高い弾力性を維持

圧縮永久ひずみが小さく、形状復元性に優れる。

パッキン、Oリング、防振材、医療用チューブ
電気絶縁性 高い絶縁破壊電圧を持ち、電気を通しにくい

高温でも安定した絶縁性を保つ。

電子機器の絶縁カバー、ケーブル被覆、コネクタ部品
無毒性・安全性 人体への影響が少なく、アレルギー反応を起こしにくい

食品衛生法や医療機器の安全基準に適合するグレードも多い。

医療機器、食品容器、ベビー用品、調理器具
撥水性・離型性 水をはじきやすく、粘着性が低い

他の物質が付着しにくく、離型性に優れる。

離型シート、コーティング材、防水シール、製菓用型
化学的安定性 多くの酸、アルカリ、塩類に対して優れた耐性を示す。 実験器具のシール、化学プラントのパッキン

 

シリコンゴムの欠点(コスト、強度の限界 など)

優れた特性を持つシリコンゴムですが、一方でいくつかの欠点も存在します。用途選定の際にはこれらの点も考慮することが重要です。

欠点 詳細 考慮すべき点
コスト 他の汎用ゴム(EPDM、NBRなど)に比べて材料費が高価である。 特殊な特性が必要な場合に限定的に使用を検討し、コストパフォーマンスを評価する。
強度の限界 引裂き強度や摩耗強度が、一部の汎用ゴムに劣る場合がある。 高い機械的強度や耐摩耗性が求められる用途には不向きな場合があるため、使用環境を詳細に評価する。
接着性 他の材料との接着が難しい。専用のプライマーや接着剤が必要となることが多い。 異種材料との複合部品を設計する際は、接着方法や接着剤の選定を慎重に行う必要がある。
耐油性・耐溶剤性 特定の油や溶剤(ガソリン、トルエン、ケトンなど)には膨潤・劣化することがある。 使用環境に特定の薬品成分が含まれる場合は、事前に耐性を確認し、適切な種類のシリコンゴムを選定する必要がある。

 

シリコンゴム加工の主要技術と特徴

シリコンゴムはその優れた特性から多岐にわたる製品に利用されていますが、その加工には素材の特性を理解した上で、適切な技術を選択することが極めて重要です。ここでは、シリコンゴムの主な加工技術と、それぞれの特徴、メリット・デメリット、そして適した用途について詳しく解説します。

切断加工(カッティングプロッター/ウォータージェット)

カッティングプロッター加工とウォータージェット加工は、金型不要でシリコンゴムを高精度に加工できる非熱的な切断方法です。レーザーのような熱源を使わないため、熱影響層(HAZ)の懸念が小さいのが共通点です。 CADデータに基づいて複雑な形状や微細な穴、曲線なども高精度で加工できるため、試作から小ロット、さらには多様な製品の製造に適しています

カッティングプロッター加工

刃物による機械的切断(接触式)で、レーザーのような熱源を使わない=原理的に非熱的です。加工時には接触に伴うわずかな摩擦熱が生じ得ますが、一般的な薄物シートの条件では熱で材料特性が変わるほどの蓄熱には至らず、HAZを問題視するケースは稀です。金型不要・段取りが軽く短納期/低コストに適しており、数mm程度までの薄物シリコンゴムシートのガスケット/パッキン/各種シールの切り出しに向きます。コーナー精度や厚物対応には限界があるため、厚物や複雑形状ではウォータージェットが有利です。

ウォータージェット加工

高圧水(必要に応じて研磨材併用)を噴射する非接触の侵食切断で、水による連続冷却が働くため、実質的に熱影響層(HAZ)が生じない“コールドカット”です。曲線・微細形状・複雑形状に対応しやすく、厚物シートや、刃物では押し跡・歪みが出やすい形状にも適します

使い分けの目安

  • 薄物シート/短納期・低コスト/試作~小ロット 

⇒ カッティングプロッター(非熱源の機械切断でHAZ懸念は小。摩擦熱は通常、問題化せず)

  • 熱に極めてデリケート/厚物/複雑形状/熱影響を極小化したい

⇒ ウォータージェット(非接触+連続冷却=実質HAZなし)

金型成形(プレス、射出、押出)(大量生産向き)

金型成形は、金型を用いてシリコンゴムを特定の形状に成形する技術であり、特に大量生産においてコスト効率と品質の均一性を実現します。主にプレス成形、射出成形、押出成形の3種類があります。

プレス成形

プレス成形は、金型にシリコンゴム材料をセットし、熱と圧力を加えて成形する方法です。特に熱硬化性シリコンゴムの成形に適しており、シンプルで比較的大きな製品の製造によく用いられます。

射出成形

射出成形は、液状のシリコンゴム(LSR: Liquid Silicone Rubber)を加熱した金型内で架橋反応により硬化させる方法です。高速で連続生産が可能であり、複雑で精密な形状の製品製造に適しています。

押出成形

押出成形は、シリコンゴム材料を加熱しながらダイス(金型)を通して押し出し、一定の断面形状を持つ長尺物を連続的に成形する方法です。チューブやコード、異形断面の製品製造に用いられます。

切削加工(試作・小ロット向き)

切削加工は、専用の切削機械・工具を用いてシリコンゴムの塊から直接削り出す加工方法です。金型が不要なため、試作品や極小ロットの製品製造、または複雑な形状の部品を短納期で製作したい場合に有効です。高精度な加工が可能であり、設計変更にも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。しかし、材料ロスが発生しやすく、大量生産には不向きです。

抜き加工(コスト削減・短納期向き)

抜き加工は、プレス機と刃型(抜き型)を用いて、シート状のシリコンゴムから特定の形状を打ち抜く加工方法です。主に平らなシート状の製品やガスケット、パッキンなどの製造に広く利用されます。金型製作が比較的容易でコストが抑えられ、短納期での生産が可能です。大量生産にも適していますが、複雑な三次元形状には対応できません。

接着・溶着加工(異材質の組み合わせ)

シリコンゴム同士、またはシリコンゴムと他の素材を接合する技術です。シリコンゴムは非接着性の特性を持つ素材のため、一般的には接着加工や溶着加工が困難です。しかし、熱や超音波を用いた特殊な技術や溶剤・接着剤を使用することで接着や溶着が可能となります。製品の機能性向上や設計の自由度を高めるために利用され、特に異種材料との組み合わせが必要な複合部品の製造において重要な役割を果たします。

 

シリコンゴム加工品の主な用途と業界別事例

シリコンゴムはその優れた特性から、多岐にわたる分野で活用されています。ここでは、主要な業界におけるシリコンゴム加工製品の具体的な用途と事例をご紹介します。

家電製品・電子部品(絶縁部品、防振ゴム など)

家電製品や電子部品の分野では、シリコンゴムの電気絶縁性、耐熱性、防振性、柔軟性が特に重宝されます。小型化・高機能化が進む中で、精密な加工が可能なシリコンゴムは不可欠な素材となっています。

具体的な用途は以下の通りです。

  • キーボードの接点ゴム、導電ゴム: 優れた耐久性と柔軟性で、快適な操作感と確実な信号伝達を実現します。
  • プリンター・コピー機のローラー、搬送ベルト: 耐熱性や耐摩耗性、ゴムの特性を活かし、用紙を正確に搬送します。
  • スマートフォンの防水・防塵パッキン: 精密な抜き加工や射出成形により、高い気密性を確保し、水や塵の侵入を防ぎます。
  • LED照明のレンズ・カバー: 透明シリコーン樹脂(液状樹脂)は光透過性に優れ、耐熱性や耐候性も高いため、屋外での使用にも適しています。
  • 家電製品の防振ゴム、クッション材: 振動吸収性に優れ、機器の動作音の低減や部品の保護に貢献します。
  • 高電圧部品の絶縁カバー、保護キャップ: 高い電気絶縁性により、漏電やショートを防ぎ、安全性を確保します。

医療・食品業界(チューブ、シール材 など)

医療・食品業界では、生体適合性、無毒性、耐薬品性、耐熱性(滅菌対応)、衛生性が極めて重要視されます。シリコンゴムはこれらの厳しい要件を満たすため、幅広い用途で採用されています。

具体的な用途は以下の通りです。

  • 医療用チューブ、カテーテル: 柔軟で体への負担が少なく、滅菌処理にも耐えるため、輸液、吸引、ドレナージなど多岐にわたる用途で使われます。
  • 輸液セット部品、人工臓器部品: 生体適合性が高く、人体に直接触れる部分にも安心して使用できます。
  • 食品製造ラインのガスケット・パッキン: 高温殺菌や洗浄に耐え、食品に影響を与えない無毒性が求められます。
  • 哺乳瓶の乳首、調理器具(耐熱ヘラ、蓋のパッキン): 耐熱性、安全性、耐久性に優れ、繰り返し使用が可能です。
  • 製薬機械のシール材、Oリング: 耐薬品性、耐熱性に優れ、様々な薬剤や洗浄液に対応します。

建築資材・工業用設備(シーリング材、パッキン など)

建築資材や工業用設備の分野では、シリコンゴムの耐候性、耐久性、耐熱性、防水性、防塵性、耐薬品性がその真価を発揮します。過酷な環境下での使用に耐え、長期的な信頼性が求められる場所で活用されています。

具体的な用途は以下の通りです。

  • 窓枠・ドアのシーリング材、ガスケット: 優れた耐候性で、紫外線や温度変化に強く、建物の気密性・防水性を長期間維持します。
  • エキスパンションジョイント(伸縮目地材): 建物の熱膨張・収縮に対応し、ひび割れを防ぎます。
  • 配管用パッキン、フランジガスケット: 高温・高圧下でも安定したシール性を発揮し、流体の漏れを防ぎます。
  • 免震ゴム、防振ゴム: 地震や機械の振動を吸収し、構造物や設備の損傷を防ぎます。建築用免震ゴムの主流は天然ゴムや高減衰ゴムですが、耐候性にすぐれれるため、特殊環境向け部材として使われます。
  • ケーブルグランド、電線保護チューブ: 耐熱性、耐候性に優れ、屋外や工場内の配線を保護します。
  • 工業炉のシール材、高温環境用パッキン: 非常に高い耐熱性を持ち、過酷な熱環境下でのシール性を確保します。

これらの事例からもわかるように、シリコンゴム加工は各業界の特定のニーズに応える形で進化し、私たちの生活や産業を支える重要な役割を担っています。

 

シリコンゴム加工を活用するためのポイント

シリコンゴム加工を成功させるためには、製品の要件と加工方法の特性を理解し、最適な組み合わせを選ぶことが不可欠です。コスト、要求される精度、生産数量、納期、そして最終的な用途や要求特性を総合的に考慮し、最適な加工方法を選定しましょう。また、信頼できる加工業者を選定することも、高品質な製品を安定して供給する上で極めて重要です。

加工方法の選定基準(コスト、精度、数量 など)

シリコンゴムの加工方法は多岐にわたりますが、それぞれの方法には得意な領域と限界があります。以下の表を参考に、貴社のニーズに最適な加工方法を選定してください。

コスト

加工方法によって初期費用(金型費用など)と個あたりの単価が大きく異なります。少量生産であれば金型不要な切削加工やウォータージェット加工が有利ですが、大量生産では金型成形がコスト効率に優れます。

精度

マイクロ単位の精密な加工が必要な場合はカッティングプロッター/ウォータージェット加工や一部の切削加工が適しています。一方、公差が比較的広い部品であれば、抜き加工や成形加工も選択肢となります。

数量(ロット)

試作や小ロット生産には切削加工やウォータージェット加工が向いています。中〜大量生産には金型成形(プレス、射出、押出)が最も効率的でコストを抑えられます。抜き加工も数量が多い場合にコストメリットがあります。

納期

短納期を求める場合は、金型製作期間が不要な切削加工やウォータージェット加工、既存金型を活用できる抜き加工などが有利です。金型成形は金型製作に時間を要しますが、一度製作すればその後の生産は迅速です。

用途・要求特性

製品がどのような環境で使用され、どのような特性(耐熱性、電気絶縁性、柔軟性など)が求められるかによって、最適な加工方法やシリコンゴムのグレードが変わります。例えば、医療用途であればクリーンルームでの加工や特定のグレードのシリコンゴムが必須となります。

 

適切な加工業者の選び方(技術力、実績、対応力)

シリコンゴムの特性を最大限に活かし、高品質な製品を安定して供給するためには、信頼できる加工業者を選ぶことが極めて重要です。以下の点を参考に、パートナーとなる業者を選定しましょう。

技術力・専門性

シリコンゴム加工は特殊な技術とノウハウを要します。多様な加工技術(ウォータージェット、金型成形、切削、抜き、接着など)に対応できるか、また特定の用途(医療、食品など)に特化した知識があるかを確認しましょう。

実績・経験

過去の加工実績や事例を参考に、希望する製品に近いものや、難易度の高い加工に対応した経験があるかを確認します。長年の経験を持つ業者は、予期せぬトラブルにも柔軟に対応できる可能性が高いです。

対応力・提案力

顧客の要望に対して柔軟な対応が可能か、あるいはより良い加工方法や材料を提案してくれるかも重要なポイントです。試作から量産まで一貫して対応できる業者であれば、工程間の連携もスムーズです。

品質管理体制

特に医療や食品など、高い品質が求められる分野では、ISO認証の有無や、トレーサビリティの確保、検査体制が整っているかを確認しましょう。

コミュニケーション

疑問点や変更点が生じた際に、迅速かつ的確なコミュニケーションが取れるかどうかも重要です。密な連携は、プロジェクトを円滑に進める上で不可欠です。

参考として、日本ゴム工業会のウェブサイトなどで、ゴム製品に関する情報や関連企業を探すこともできます。日本ゴム工業会

 

まとめ|シリコンゴム加工の可能性と今後の展望

シリコンゴムは、その優れた耐熱性、耐候性、安全性から、現代社会に不可欠な素材です。本記事では、ウォータージェットや金型成形、切削、抜き、接着といった多様な加工技術と、家電から医療、建築に至る幅広い用途を解説しました。最適な加工方法を選定し、信頼できる加工業者と連携することで、高精度かつ効率的な製品開発が実現します。今後、EV(電気自動車)や再生可能エネルギー分野での需要拡大、医療・食品分野でのさらなる高機能化・安全性の追求など、シリコンゴム加工の可能性は無限大です。私たちの生活と産業の発展に、今後も重要な役割を担い続けるでしょう。